By デジタルサイネージディレクター:t.takita Posted
デジタルサイネージとモニターの違いを徹底解説|導入前に知っておくべき7つのポイント
デジタルサイネージの導入を検討している方の多くが抱く疑問の一つが「普通のテレビやモニターとデジタルサイネージ用のモニターって何が違うの?」という点です。見た目が似ているため、「費用を抑えるために家庭用テレビで代用できないか」と考える方も少なくありません。
この記事では、サイネージ業界で培った経験をもとに、デジタルサイネージ用モニターと一般的なモニター(テレビ)の違いを分かりやすく解説します。導入目的に最適な選択ができるよう、それぞれの特徴とメリット・デメリットを詳しく説明していきます。
目次
デジタルサイネージとモニターの基本的な違い
デジタルサイネージとは
デジタルサイネージとは、液晶ディスプレイやLEDディスプレイなどの電子的な表示機器を使って、デジタルコンテンツ(映像、画像、文字情報)を表示するシステムのことです。「電子看板」とも呼ばれ、従来の紙のポスターや看板に代わる次世代の情報発信ツールとして注目されています。
駅の改札口付近で電車の運行情報を表示している液晶画面や、ショッピングモールでセール情報を流している大型ディスプレイ、レストランのメニューボードなど、私たちの身の回りで数多く活用されています。
一般的なモニター(テレビ)とは
一般的なモニターやテレビは、主に家庭や一般的なオフィス環境での使用を想定して設計されています。テレビ番組の視聴やDVD・Blu-rayの鑑賞、パソコンの外部ディスプレイとしての利用が主な目的となります。
結論から言えば、見た目は似ていても、用途や設計思想が根本的に異なります。
デジタルサイネージ用モニターと一般モニターの7つの違い
1. 輝度(明るさ)の違い
最も重要な違いの一つが輝度です。
- 一般的なテレビ・モニター: 300~500cd/m²(カンデラ/平方メートル)¹²
デジタルサイネージ用モニター: 400~1,200cd/m²(屋内用)、1,500~3,000cd/m²(屋外用)¹³
この数値の差は想像以上に大きく、実際の視認性に直結します。例えば、明るい店内や窓際に設置した場合、一般的なテレビでは画面が暗く見え、せっかくのコンテンツが伝わりません。特に屋外設置では、直射日光下でも視認できる高輝度が必要不可欠となります。
2. 耐久性・連続稼働性能の違い
運用時間の想定が根本的に異なります。
- 一般的なテレビ・モニター: 1日数時間の使用を想定、家庭環境での利用前提⁴
- デジタルサイネージ用モニター: 16~24時間連続稼働対応、業務環境での長期利用前提⁵⁶
デジタルサイネージは店舗の営業時間中ずっと動作し続けることが一般的です。また、駅や空港などでは24時間365日稼働するケースも珍しくありません⁷。一般的なテレビを長時間連続稼働させると、熱暴走や故障の原因となる可能性があります⁷。
3. 設置方法の対応範囲
設置の自由度に大きな差があります。
- 一般的なテレビ・モニター: 横置き・水平設置が基本、縦置きは非推奨⁸
- デジタルサイネージ用モニター: 横置き・縦置き・角度調整に対応、壁掛け・天吊り・床置きなど多様な設置方法⁵
デジタルサイネージでは、設置場所の形状や目的に応じて縦長の表示が必要になることがあります。例えば、店頭のメニューボードや案内表示では縦置きが効果的です。また、複数台を組み合わせたマルチディスプレイ構成にも対応しています⁵。
4. 環境対応力の違い
使用環境の厳しさへの対応が異なります。
屋外対応機能:
- 防水・防塵性能(IP55、IP65等の規格対応)³
- 温度変化への耐性(-20℃~+60℃対応モデルもあり)
- 直射日光・風雨への耐久性⁴
- 強化ガラスによる衝撃保護⁸
屋内での耐環境性:
- 埃や塵の多い環境への対応
- 温湿度変化への適応
- 振動や衝撃に対する堅牢性⁴
一般的なテレビは清潔で安定した家庭環境での使用を前提としているため、これらの厳しい環境には対応していません。
5. 管理・制御機能の違い
遠隔操作や一括管理の機能に大きな差があります。
デジタルサイネージ用モニター:
- ネットワーク経由でのリモート制御¹⁰
- CMS(コンテンツ管理システム)連携²
- スケジュール配信機能⁶
- 複数台の一括管理
- 外部システムとのAPI連携
一般的なテレビ・モニター:
- 基本的にリモコンによる個別操作
- ネットワーク機能は限定的²
- 業務用途の管理機能は非搭載
店舗チェーンなどで複数拠点に設置する場合、本部から一括でコンテンツを配信・管理できる機能は必須となります。
6. 表示機能・インターフェースの違い
コンテンツ表示に関する機能面での違いもあります。
デジタルサイネージ用モニター:
- タッチパネル機能搭載モデル³
- 豊富な入出力端子
- デイジーチェーン接続対応
- 画質調整の詳細設定¹¹
- 狭額縁設計(マルチディスプレイ対応)⁵
一般的なテレビ・モニター:
- 主に映像鑑賞向けの機能
- 家庭用機器との接続を想定
- 個人利用向けのユーザーインターフェース
7. コスト構造の違い
初期費用と運用コストの考え方が異なります。
初期費用:
- 一般的なテレビ:比較的安価
- デジタルサイネージ用モニター:高価だが、業務用途に必要な機能を包含
運用コスト:
- 故障リスクとメンテナンス費用
- 消費電力と電気代
- 保証期間と サポート体制
長期的な視点で見ると、適切な用途に適した機器を選択する方がトータルコストは抑えられます。
テレビ・モニターでの代用は可能?条件と注意点
代用が可能なケース
以下の条件を満たす場合、一般的なテレビでの代用も検討できます:
設置環境:
- 屋内の清潔で安定した環境
- 直射日光が当たらない場所
- 温湿度が安定している
運用条件:
- 1日の稼働時間が8時間以内
- 横置き設置で問題ない
- 管理台数が少ない(1-2台程度)
用途:
- 簡単な情報表示
- 待合室でのエンターテイメント
- 一時的・短期的な利用
代用時の注意点とリスク
技術的なリスク:
- 長時間使用による熱暴走³
- 焼き付きや残像の発生⁵
- 予期しない故障とダウンタイム
運用面でのリスク:
- リモート管理ができない
- コンテンツ更新の手間
- 複数台管理の困難さ
保証・サポートのリスク:
- 業務用途使用時の保証対象外⁹
- 故障時の代替機確保の困難さ
代用を検討する際のチェックポイント
- 設置場所の環境確認
- 周囲の明るさ
- 温湿度の変化
- 埃や振動の有無
- 運用計画の確認
- 1日の稼働時間
- 年間稼働日数
- コンテンツ更新頻度
- 管理体制の確認
- 管理担当者の有無
- 故障時の対応体制
- メンテナンス計画
デジタルサイネージ用モニターの選び方
デジタルサイネージ用モニターを選択する際は、設置環境と用途を十分に検討することが重要です。適切な機器選択により、投資効果を最大化できます。
設置場所に応じた選択
設置環境によって必要な仕様が大きく異なるため、まず設置場所の特性を把握しましょう。
屋内設置の場合、標準的な輝度(400-700cd/m²)のモニターで十分な視認性を確保できます。オフィスビルのロビーや店舗内であれば、基本的な耐久性とネットワーク機能を備えたモデルが適しています。
店頭や窓際などの半屋外環境では、より高い輝度(700-1,500cd/m²)が必要になります。
これは外光の影響を受けやすく、標準的な輝度では画面が見づらくなるためです。また、温度変化への対応力と防塵機能も重要な要素となります。
完全な屋外設置では、超高輝度(1,500cd/m²以上)のディスプレイが必須です。直射日光下でも視認できる性能に加え、完全防水・防塵機能、耐候性、耐衝撃性を備えた堅牢な設計が求められます。
サイズと解像度の選択
画面サイズは視聴距離と設置スペースを考慮して決定します。
受付や店頭での案内用途には32-43インチが適しており、近距離からの視認に最適化されています。ロビーや待合室など、中距離からの視聴が想定される場合は49-55インチが効果的です。大型施設やイベント会場のような広いスペースでは、65インチ以上の大画面によって遠方からでも十分な視認性を確保できます。
解像度については、用途に応じて選択しましょう。一般的な情報表示にはフルHD(1920×1080)で十分ですが、高精細な画像や細かいテキストを表示する場合は4K(3840×2160)の導入を検討してください。縦型設置を予定している場合は、縦型表示に対応した解像度(1080×1920、2160×3840)への対応も確認が必要です。
機能面での検討事項
基本機能として、適切な輝度レベル、必要な連続稼働時間、安定したネットワーク接続機能は必須です。これらの要素が導入後の安定運用を左右します。
追加機能として、双方向のコミュニケーションが必要な場合はタッチパネル機能を、来店者の属性分析を行いたい場合はカメラ・センサー機能を検討してください。音声による情報提供を計画している場合は、高品質な音声出力機能も重要な選択肢となります。
導入時のコスト比較
デジタルサイネージ導入時のコストを正確に把握するため、初期費用と運用コストの両面から比較検討することが重要です。
初期費用の比較
55インチクラスでの導入を想定した場合、家庭用テレビを活用したシステムでは、本体価格が10-20万円程度に加え、コンテンツ配信用のSTB(セットトップボックス)などの追加機器で5-10万円、設置費用として3-5万円程度が必要になります。これらを合計すると18-35万円程度の初期投資となります。
一方、デジタルサイネージ用モニターを導入する場合、本体価格は30-60万円と高額になりますが、業務用途に必要な機能が包含されています。これにCMS・配信システムの初期設定費用や設置費用5-10万円を加えると、初期費用の合計は35-70万円程度となります。
●初期費用を抑える手段として、レンタルでの利用もおすすめです。
運用コストの比較
5年間の運用を想定した年間コストでは、大きな違いが現れます。
家庭用テレビを活用したシステムでは、年間の電気代が約20,000円、長時間使用による故障リスクを考慮した交換費用が年間50,000円程度、定期的なメンテナンス費用が30,000円程度かかり、年間合計で約100,000円の運用コストが発生します。
デジタルサイネージ用モニターの場合、電気代は25,000円程度とやや高くなりますが、CMS利用料として年間120,000円、高い耐久性により故障リスクが低いためメンテナンス費用は20,000円程度に抑えられ、年間合計で165,000円程度となります。
ROI(投資回収率)の考え方
デジタルサイネージの効果測定では、定量的効果と定性的効果の両面から評価することが重要です。
定量的効果として、売上向上率、来店客数の増加、商品認知度の向上などを数値で測定できます。例えば、月間売上が5%向上した場合、年間の売上増加額から投資回収期間を算出することが可能です。
定性的効果には、ブランドイメージの向上、スタッフの業務効率化、顧客満足度の向上などがあります。これらは直接的な数値化は困難ですが、長期的な企業価値向上に寄与する重要な要素です。適切な効果測定により、初期投資の妥当性を判断し、継続的な改善につなげることができます。
導入を成功させるポイント
デジタルサイネージの導入を成功させるためには、段階的なアプローチが効果的です。
計画段階では、導入目的と期待効果を明確に定義することから始めましょう。
単なる機器導入ではなく、何を達成したいのか、どのような効果を期待するのかを具体的に設定することで、適切な機器選択と運用計画が立てられます。設置環境の詳細な調査も重要で、照明条件、温湿度、振動、電源容量などを事前に確認することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
導入段階では、機器選定に十分な時間をかけることが重要です。価格だけでなく、耐久性、サポート体制、将来的な拡張性なども総合的に評価しましょう。プロフェッショナルな設置業者による施工と、十分なテスト期間を設けることで、安定した運用開始が可能になります。
運用段階に入ってからも、継続的な改善が成功の鍵となります。
定期的なコンテンツ更新により、視聴者の関心を維持し、効果測定と改善のサイクルを回すことで、投資効果を最大化できます。また、予防保全的なメンテナンス計画により、長期間の安定運用を実現することができます。
●デジタルサイネージの運用方法についての記事はこちら
適切な選択で最大の効果を
デジタルサイネージ用モニターと一般的なモニター(テレビ)の違いを理解することは、導入成功のカギとなります。
これまで解説してきた内容から、特に重要なポイントを改めて確認しましょう。
まず、輝度の違いが視認性に大きく影響することは最も基本的でありながら、最も重要な要素です。設置環境に適した輝度を選択しなければ、どんなに素晴らしいコンテンツを制作しても、視聴者に届けることができません。
次に、耐久性は長期運用において不可欠な要素です。24時間365日の連続稼働を前提とした設計と、家庭での数時間の利用を想定した設計では、根本的な耐久性が異なります。この違いを理解せずに機器選択を行うと、予期しない故障や頻繁なメンテナンスが必要になり、結果的に高いコストを支払うことになります。
管理機能の充実度は、運用効率を大きく左右します。複数台の一括管理や遠隔でのコンテンツ更新機能は、人件費の削減と運用品質の向上に直結します。また、設置環境に応じた適切な機器選択により、長期間にわたって安定した運用が可能になります。
コストについては、初期費用だけでなく運用コストも含めた総合的な評価が重要です。
安価な家庭用テレビを選択しても、故障リスクや管理コストを考慮すると、必ずしも経済的とは言えない場合があります。
一般的なテレビでの代用は、限定的な条件下では可能ですが、デジタルサイネージ本来の効果を最大化するためには、専用設計されたモニターの導入をお勧めします。投資対効果を考慮した場合、適切な機器選択により得られる効果は、初期投資の差額を十分に上回ることが期待できます。
導入を検討される際は、目的や設置環境、運用計画を総合的に評価し、最適な選択を行うことが重要です。技術の進歩により選択肢は多様化していますが、基本的な要件を満たした上で、将来的な拡張性も考慮した機器選択を行うことで、長期間にわたって価値のあるデジタルサイネージシステムを構築することができます。
専門家への相談を通じて、投資対効果の高いデジタルサイネージシステムを構築することをお勧めします。適切な計画と実装により、デジタルサイネージは強力なコミュニケーションツールとして、ビジネスの成長に大きく貢献することでしょう。
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参考文献
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- 株式会社ランドスキップ「デジタルサイネージはテレビ用モニターで代用できる? ふたつの違いを解説」
https://www.landskip.services/blog/55 - LED NAGOYA「デジタルサイネージとモニターの違いを徹底比較:選択の決め手を解説」
https://led-nagoya.jp/news/news-568/ - DDS「実はこんなに違う!デジタルサイネージと家庭用テレビ4つの違い」https://d-d-s.jp/2022-07-29/
- 大塚商会「デジタルサイネージ ディスプレイ」https://www.otsuka-shokai.co.jp/products/digital-signage/means/display/
- パナソニック コネクト「デジタルサイネージ用のモニターとは?種類や選び方を紹介」https://connect.panasonic.com/jp-ja/products-services/digitalsignage/column/clm09
- BIZee「デジタルサイネージディスプレイと他のモニターの違いとは?」https://bizee.jp/business-service/digital-signage-display/
- テックウインド株式会社「デジタルサイネージのディスプレイにはどんな機能があるの?」
https://www.tekwind.co.jp/column/entry_147.php - ヤマトサイネージ「テレビとデジタルサイネージの違いとは?」https://yamato-signage.com/what-is-the-difference-between-tv-and-digital-signage/
- NTTテクノクロス「業務用ディスプレイとは?」https://www.ntt-tx.co.jp/products/hikarisignage/hs_manga/keyword05/
- デジタルクルーズ「デジタルサイネージ用モニターとテレビ用モニターの違い【7選】」
https://signage.digital-cruise.co.jp/column/signage-monitor-differences/ - ソニー「デジタルサイネージに適したモニターの機能とは?https://www.sony.jp/bravia-biz/signage/monitor.html
- 株式会社ランドスキップ「デジタルサイネージはテレビ用モニターで代用できる? ふたつの違いを解説」
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